コラム:クラウドコンピューティングとは?そのメリットと代表例
目次
働き方改革やコロナ禍による在宅勤務(テレワーク)の増加により、クラウドコンピューティングの利用が以前よりもさらに増えてきています。これまで自社でネットワークを用意していても、ハードウェアの置き換えのタイミングでクラウドへの移行(マイグレーション)を考えている企業も多いようです。
そこでこの記事では、クラウドコンピューティングについての概要と、そのメリットやデメリットを改めて考えます。サーバーの更新やクラウドマイグレーションを考えている企業があれば、参考にしてください。
クラウドコンピューティングとは
クラウドコンピューティングとは、コンピューティングサービスに必要な機能がインターネット上のサーバーで提供されており、それを利用する形態です。提供される機能には、サーバー、ストレージ、データベース、その他のアプリケーションなどがあります。機能を提供しているサービスのことも、クラウドコンピューティング、クラウドコンピューティングサービス、クラウドサービスなどと呼ぶのが一般的です。サービスまで含めて「クラウド」と呼ばれるので、その実態がわかりにくいのも事実です。
クラウドサービスは、実にさまざまな形で多くの企業に利用されています。
オンプレミス
クラウドコンピューティングとは逆の形態です。自社内にサーバーやネットワークなど物理的なインフラを用意し、アプリケーションやデータベースをインストールして、社内でのみ利用します。クラウドコンピューティングが普及する前は、企業ではオンプレミス方式が主流でした。
コストはかかりますが、自社の要件に合わせて自由にカスタマイズでき、高いセキュリティを確保できます。
クラウドコンピューティングの種類
どのようなリソースを誰が利用できるのかによって、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリットクラウドの3つに分けられます。
パブリッククラウド
サーバーや回線などのインフラからアプリケーションまで、すべてがクラウド上で提供されます。ユーザーが用意するのは、端末と、端末からクラウドサービスに接続するインターネット回線のみです。インフラやシステムの運用管理は、クラウドサービス提供側が担当します。インターネット回線を経由して、誰でも利用可能です。
プライベートクラウド
1つの企業や組織が専有して使うクラウドコンピューティングサービスです。オンプレミスのように、自社内にサーバーを置いたり、自社の用途や要件に合わせてカスタマイズしたりできます。パブリッククラウドよりも高いセキュリティを確保することが可能です。
プライベートクラウドの運用管理にかかる費用やスタッフは自社で負担しなければなりません。そのため、導入にかかる時間や費用はパブリッククラウドよりも大きくなります。
ハイブリッドクラウド
パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたものです。組み合わせることでデータやアプリケーションを共有し、両方のメリットを利用できます。利用する機能やデータの機密性などで、パブリックとプライベートを使い分けることが可能です。
クラウドコンピューティングは、提供するリソースの種類によってSaaS、PaaS、IaaSの3つに分けることもできます。詳しくは「SaaS導入は業務効率化につながる?IaaSやPaaS、クラウドとの違いとは」をご参照ください。
クラウドコンピューティングの用途
クラウドコンピューティングは、利用するリソースによりさまざまな用途に使われています。意識せずに使っているクラウドサービスも多いでしょう。
- 提供されているアプリケーションや機能をそのまま利用する
例:Gmail、Dropbox、Microsoft Office365など - 自社でアプリケーションをインストールして業務システムとして利用する
例:アプリケーションの作成・テスト、データ分析、機械学習など - 自社でシステムを構築して、新しいサービスとして顧客に提供する
例:動画やアプリケーションの配信、IoTなど
クラウドコンピューティングのメリットとデメリット
クラウドコンピューティング、なかでもパブリッククラウドには、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- コスト管理がしやすい
多くのクラウドサービスでは、初期費用は不要です。ハードウェアやアプリケーションを用意する必要もありません。利用料金は、利用した分だけ支払う従量課金制です。
一時的に利用量を増減することも容易なので、利用しない分まで料金を支払う必要はありません。コストを適正化しやすい料金体系になっています。 - すぐに利用できる
ほとんどのクラウドサービスの手続きはインターネット上で完了します。契約書をやり取りしたりハードウェアを用意したりする必要はなく、利用したいときにすぐに利用可能です。新しいシステムの構築や導入にかかる時間は大きく節約できます。 - 拡張性が高い
アクセス量に応じて弾力的にリソースの利用量を変更できるので、柔軟性のあるシステムを構築できます。さまざまな機能やリソースが提供されているので、機能追加も容易です。 - ハードウェアやOSの運用管理が不要
ハードウェア、OS、ミドルウェアなどはクラウドサービス提供側が用意し、メンテナンスやアップグレード、不具合対応などを行います。ユーザーがインフラやアプリケーションの管理を行う必要はありません。その分、サービスやシステムの構築に時間をかけることができます。 - インターネットがあればいつでもどこからでも利用できる
アプリケーションやデータはクラウド上で共有しているので、作業場所はオフィスのPCに限りません。ログインさえできれば、時間や場所、端末を問わずアクセスできます。 - 災害時にも耐久性が高く、復旧もしやすい
クラウドサービスを利用していれば、サーバーやデータは自社とは違う場所にあります。自社が災害に遭ったときでもデータは安全です。
クラウドサービス提供側が災害に遭った場合でも、データセンターは災害に対する耐性が高いので、オンプレミスよりも被害は少ないでしょう。多くのクラウドサービスはデータを複製化してあるので、早期復旧も可能です。
デメリット
- インターネットに接続していないと利用できない
インターネットに接続できなければ、クラウドサービスへは一切アクセスできません。
ただし、現在においてスマートフォンでアクセスできない場所は少ないので、このデメリットを感じることは災害時や障害発生時などではないでしょうか。 - 突然サービスが終了するリスクもある
無料で使えるクラウドサービスは、運営する企業の都合によってサービス終了するリスクがあります。サービスによっては、利用データがビッグデータの一部として利用される可能性もあるものです。ユーザーも、これらを了解したうえで使わなければなりません。
ただし、多くの場合は事前にサービス終了の通知があります。データをエクスポートする方法も示されるので、それからの対処でも間に合うでしょう。 - 情報漏洩のリスクがゼロではない
データの多くをクラウド上に保存し、インターネット経由でアクセスするため、情報漏えいのリスクは否定できません。しかし、多くのクラウドサービスでは、データの暗号化やトラフィックの監視など、高度なセキュリティ対策を行っています。現在では必ずしもオンプレミスよりもリスクが高いとは言えません。
これらのデメリットは、設定や日々の運用でカバーできるものです。しかし、どうしても気になる場合は、クラウドコンピューティングを導入するベンダーにご相談ください。
代表的なクラウドコンピューティング3例
代表的なクラウドサービスを3つ紹介します。
AWS(Amazon Web Services)
Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスです。クラウドサービスのなかではもっとも長い歴史と大きなシェアがあり、日本でも企業や自治体、個人など多くのユーザーがいます。ユーザーが多いので関連する情報も多く、日本語でも多くの情報が入手可能です。
コンピューティングやストレージをはじめ、すでに多くの機能が提供されていますが、機能追加や新しいサービスの提供も頻繁に行われています。グローバルなスケールメリットを生かして何度ものプライスダウンが実行されました。
AWSについては、詳しくは下の記事もご参照ください。
「Amazon EC2の導入で社内のシステムを効率化できる?まずはEC2の基本を知ろう」
「AWSへの移行をスムーズに行うには準備が重要 移行サービスも活用しよう」
Microsoft Azure
Microsoftが提供するクラウドコンピューティングサービスです。 Windows ServerやOfficeアプリケーションとの親和性が高いので、多くの企業ユーザーがいます。Windows ServerやMicrosoft Office365のユーザーには、慣れた操作性や連携のしやすさがメリットです。
社内で利用しているWindows ServerやActive Directoryとの連携も容易で、ハイブリッドクラウドとしてもよく使われています。
Google Cloud
Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスです。GCP(Google Cloud Platform)とも言われます。
多くのユーザーは意識せずに使っていますが、GmailやGoogle MapsなどはGoogle Cloudで提供されているサービスの一部です。Googleの得意分野であるビッグデータの分析やAI系のサービスには定評があります。
クラウドサービスをどうやって選ぶか
三大クラウドサービスは、どのサービスもほぼ同等の機能を提供しています。どのサービスを選択するかは、コストや連携したいサービス、得意分野など、環境面で選択することが多いでしょう。マルチクラウドとして、それぞれのサービスから必要な機能を組み合わせて利用することもできます。
クラウドをどのように導入するのかが重要
テレワークの増加にともない、企業でも、アクセスする場所や時間を問わないクラウドコンピューティングへの移行の流れは止まらないでしょう。クラウドを導入するかどうかを迷うのではなく、どのように自社の業務に取り入れるのかを考える段階ではないでしょうか。業務システムを移行するだけでなく、一部のキャンペーンや顧客に提供するシステムだけを利用するなど、さまざまな方法があります。
しかし、クラウドの活用には、オンプレミス環境とは異なるノウハウが必要です。またオンプレミス環境をそのままのスペックでクラウド上の仮想サーバへ移行する、となると、かえってコストが高くなるケースもあります。自社だけでの導入が難しければ、ノウハウを持った企業のサポートを受けることをおすすめします。
システムズでは、「クラウド最適化移行」をご提案しています。現在のシステムをそのままクラウドに移行するだけでなく、コストやパフォーマンスをポイントに、より適したサービスを構築しながらの移行が可能です。クラウドサービスへの移行を検討される際には、一度お問い合わせください。
<参考>
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