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DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例に見る成功のポイント・DXレポート2を踏まえて

2022/06/06(初回公開日:2021/03/01)

すでに大手企業では積極的な取り組みが行われるようになっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。しかし、特に100~300人規模の企業ではまだまだ導入が進んでいません。また、取り組んでみたものの、思ったような成果が挙げられなかった企業もあることでしょう。

経済産業省では2018年にDXレポートとして、DXに着手しないことで起こるデメリットや対策を解説しました。さらに2020年12月にはDXレポート2として、コロナ禍においてDXへの取り組みが企業の成長により重要性を増しているとしています。そこで今回は、日本におけるDXの成功事例を見たうえで、導入への課題や成功につなげるポイントについてお伝えします。

すでに取り組みを進める企業も増えているDXとは?

そもそもDXとは、社会やビジネス環境の変化に対応し、既存システムと新しいデジタル技術を組み合わせ、顧客のニーズに合った新しいビジネスを創出するために自社の改革を行うものです。AIやクラウドなど新たなデジタル技術の導入にばかり目が行きがちですが、既存のシステムをいかに効果的に活用するかという点もDX導入を成功させるポイントのひとつです。

→ DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?積極的に取り組むべき理由とDXによるメリット

DXの成功事例3

今回、DXへの取り組みに成功した事例を3つ紹介しますが、それぞれ業種も企業規模も異なる事例です。そのため、どういった課題を抱えていて、その解決方法としてどういった手法を使ったのかも多様で、同じではありません。もちろん自社の状況に必ずしもあてはまらないかもしれませんが、課題の発見や解決手法は示唆に富んでいると言えるでしょう。

既存ソフトの課題点を解決し、販売の機会損失防止を実現

大手酒造会社であるA社では、棚割ソフトを使って商品の陳列状況を把握し、分析・検討、そのデータをもとにして小売店舗での最適な棚割提案を行っていました。

しかし、このソフトを使うには、準備段階として店舗で撮影した画像を参考にひとつずつ手作業で棚割を再現する必要があったのです。そのため、100種類の商品が並んでいる棚の再現をするには、商品配置を100回繰り返さなければならず、膨大な時間と手間が大きな課題となっていました。

そこで、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した棚画像から、どの商品がどこに並んでいるかを自動的に判別するシステムを導入。これにより、棚割状況のデータ化にかかる時間を最大で約10分の1に削減。これまでは実際の棚割状況を確認し、改善まで行えなかったものが空いた時間で可能になり、早めの改善提案で販売の機会損失防止を実現しました。

過去に蓄積されたデータの効果的な活用で健康寿命の延伸に貢献

ある地域で急性期医療を担っているB病院。同院では、医療技術が急速に進化しているにもかかわらず、その効果が十分に発揮されていないという課題の解決にさまざまな取り組みを実施しています。そのなかでも注力しているのが予防医療です。

同院では、予防医療が重症化の防止につながるうえ、増大し続ける医療費の適正化、医師不足への対応になるとして、2019年6月に「予防医療プラザ」をオープンさせました。

ここで、過去に蓄積されていた約6万人分の健康診断データと生活習慣データを、新たに導入した新しいデジタル技術「健康結果予測シミュレーション」で分析。3年後までの将来予測を可能にしました。

成功のポイントは、これまでに蓄積したデータを最新のAI技術と融合させたことです。これにより、患者に対しより適切なアドバイスが可能になり、健康寿命の延伸に大きく貢献しています。

DXの導入で一番の強みである業務に注力できるように

コールセンターアウトソーシングを中心としたCRMソリューションの提供を行っているC社。同社では、毎月届く万単位の注文書入力・確認作業に追われ、一番の強みであるコンタクトセンター業務を最大限に活かせていませんでした。

そこで、さまざまなフォーマットの注文書を自動で読み取り、データ化するツールを導入。これまでに比べ、約5倍近くの生産性向上を実現しています。

さらに自動化により、空いた時間を同社の最大の強みであるコンタクトセンター業務に向けられるようになり、顧客満足度の向上と従業員のモチベーション維持につながっています。

日本におけるDXの課題と導入を成功させるポイント

情報処理推進機構(IPA)が2020年5月に公開した「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」。これによると、DXの導入で成果を出している企業に3つの共通点があると言います。具体的には次のとおりです。

全社戦略に基づきDXに取り組んでいる

IPAの調査によると、DXの導入で成果を上げているのは、一部門だけ、もしくは部署ごとに個別で取り組んでいる企業ではなく、全社戦略に基づいてDXに取り組んでいる企業です。

先に見たDX導入事例でも、B病院では予防医療の重要性を認識し予防医療プラザをオープンさせています。また、A社でも全国の巡回営業担当者の力を活用し新技術の活用を進めるといった形で、全社的にDXに取り組んだことで成果を上げています。

IT業務がわかる役員の比率が高い

IT業務がわかる役員の比率でDXへの取り組み成果を比較すると、単純な業務効率化では大きな差は見られません。しかし、「ビジネスモデルや新サービスの創出」など、戦略的マネジメントの応用まで考えると、全社を挙げた取り組みだけではなく、役員の理解度が大きく影響するという結果が出ています。

先述したB病院の事例でも、院長がIT分野の業務に理解があったからこそ、最新の技術導入が迅速に実現したのです。

DXを導入する組織文化がある

DXの導入で成果を上げられるかどうかには、企業がもともと持っている組織文化も大きく影響します。「リスクを取り、チャレンジ」「多様な価値観受容」「仕事を楽しむ」「意思決定のスピード」などが、成果を上げている企業では挙げていない企業よりも高い数値を示しています。

また、情報処理推進機構(IPA)では2020年6月9日、企業がDXを進めるうえでの実態と課題を分析し、システム構築のあり方などをとりまとめた文書を公開しました。その中の1つ、「DXの実現に向けた取り組み」は特に技術面に対する言及が中心となったもので、主なポイントは次のとおりです。

IPAは、約300社のDX推進指標の自己診断結果を集約・分析した結果、日本の大企業・中堅企業の多くがDXの実践段階で足踏み状態の傾向があるとしています。その理由のひとつとして、「自社のITシステムの現状把握ができていない」「ITシステムのブラックボックス化が進んでいる」と技術的課題を挙げました。

そして、解決策として「自社のIT成熟度、データの利活用状況を可視化する指標およびガイダンス」「DXへ対応できるシステムへのマイグレーションを行う実践手引書」の策定を挙げています。さらに、DXを実現するためのITシステムに求められる共通項を整理することも必須としました。これを実現するには弊社の「レガシーシステムIT総合診断」がおすすめです。

先述した3つのポイントも含め、IT技術に理解を深めるのはもちろん、そのうえで自社のITブラック化を防ぐための現状把握がDX導入成功のつながると言えそうです。

DXの導入を実現させるには、まず変革を受け入れる環境つくりが重要

DXは、他社がやっているから自社で導入しようとしても、すぐに導入できるわけではありません。また、導入しただけで成果を出せる環境が実現できるわけでもないのです。DXの導入を実現させるには、これまでの働き方の変革を受け入れる環境や迅速な決断力が求められます。

そうした意味では、DXの導入を検討する際にまずは自社がさまざまな変革を受け入れるための準備ができているか、「DX-ready」の状況になっているかの確認から始めることをおすすめします。

参照サイト:

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