なぜ今あらためて COBOL なのか?Java と比べて見える COBOL の強み

目次
「COBOL=古い言語」「Java や他言語に置き換えるべき」という印象を持たれがちですが、本当にそうでしょうか。ここでは、長年 COBOL を業務システムで使ってきた立場から、主に Java と比較したときの COBOL の「優位な点」を整理してみます。レガシー刷新やマイグレーションを検討している方の参考になれば幸いです。
高速バッチの COBOL、移植性の Java――設計思想の違い
もともとコンピュータは「読み・書き・そろばん」を高速にこなすための道具として使われてきました。業務システムの世界では、「どれだけ早くバッチを終わらせられるか」が重要視されており、各メーカーが同じ業務プログラム(COBOL)を動かして実行時間を競うような時代もありました。
その結果、各メーカーは COBOL コンパイラの最適化に心血を注ぎ「同じ COBOL ソースを、いかに高速に実行させるか」が長年のテーマだったという歴史があります。この積み重ねにより、現在の COBOL 実行環境は「バッチ処理の実行速度」が極めて高いレベルに達しています。
一方で Java は、「バッチ処理重視」の言語/実行環境として設計されたわけではありません。重要視されたのは、さまざまな環境で同じコードを動かせる「移植性」、GUI アプリケーションや Web アプリケーションなどの汎用性といった面であり、COBOL のように「特定の業務バッチを限界まで高速化する」方向への最適化は、中心ではありませんでした。
そのため、現行の COBOL バッチを Java にそのまま移行すると、「実行時間が 2~3 倍になる」ケースが珍しくなく、夜間バッチなど、処理時間に厳しい制約があるジョブは、そのままでは Java 移行が難しいといった問題が発生します。「バッチが夜間に終わらなくなる」ようでは本末転倒です。
処理時間がビジネスに直結する業務バッチでは、今なお COBOL が非常に強力な選択肢である、という点は押さえておく必要があります。
国際標準としての COBOL と計算精度
COBOL が誕生した背景には、「メーカーごとにバラバラだった業務用言語を統一したい」という強いニーズがありました。そのために各社が集まり、CODASYL という組織を作って、言語仕様を共同で策定したのが COBOL の始まりです。この COBOL 言語仕様は非常に厳密で、たとえば次のような点まで細かく規定されています。
- 計算精度(結果:最大 18 桁、中間結果:最大 31 桁)
- JIS や ASA などの規定事項
こうした標準化の恩恵として、「COBOL で書かれたプログラムは、どの国のどの計算機で動かしても、同じ計算結果が得られる」ことが原則として保証されています。一方 Java は、特定ベンダーによる言語仕様・実装が出発点であり、浮動小数点などの扱いも含め、COBOL と比べると厳密さ・一貫性の面で差があります。
事務計算など「桁・端数」の扱いに厳密さが要求される分野では、そのまま単純に Java に移行すると、計算誤差が問題になることがあり、そうした世界では、COBOL の厳密な計算仕様は、今なお非常に大きな安心材料です。
COBOL の「将来性」は本当にないのか?
「COBOL は古いから、いずれなくなる」という声を耳にすることがあります。
しかし、COBOL は誕生から 70 年以上経った今でも現役で使われ続けています。それは単に「古い資産が残っているから」というだけではなく、言語として進化し続けてきたからでもあります。
COBOL には、時代の要請に応じてさまざまな機能が追加されてきました。
- 当初は存在しなかった計算式(COMPUTE 命令)
- ビット処理命令
- 構造化プログラミングのための構文
- オブジェクト指向の要素(クラス、継承的な考え方)
- 関数を定義して再利用できる機能 など
そして現在も、CODASYL の流れをくむ標準化団体によって、「これからの COBOL に必要な仕様」を検討し続けています。「新しい=将来性がある」「古い=将来性がない」と単純に決めつけるのではなく、「標準が維持・進化し続けているか」「実運用で使われ続けているか」という観点で見ると、COBOL は今も十分に“現役の言語”だと考えられます。
COBOLの読みやすさが支える、長く使えるシステムの保守性
業務システムのプログラムは、一度作って終わりではありません。
機能追加、実行環境の変化への対応、バグ修正(Bug 対応)、法改正・制度変更への追従といった理由で、何年にもわたって改修・拡張が行われます。そして、改修する人は往々にして「最初の作成者とは別の人」です。そのときに重要になるのが、プログラムの「可読性」や「可視性」です。
COBOL は、もともと「英語に近い形で処理内容を記述する」という思想で設計されており、記述としてはやや冗長に見える部分もあります。ただし、この冗長さこそが、長期運用時の読みやすさ、仕様を追いかけやすさ、人が変わっても理解しやすいことにつながっており、大規模な業務システムのライフサイクル全体を考えると、非常に重要な性質です。
一方、Java は「開発効率」や「柔軟性」に重きを置いて発展してきた言語であり、書き方次第では極めてコンパクトかつ抽象度の高いコードを書くことができます。
その反面、言語仕様として「業務処理を自然言語のように記述する」ことは主目的ではない、フレームワークやライブラリ層で抽象化が重なり、全体像が見えにくくなることも多いといった側面があり、「後から読む人にとってのわかりやすさ」は、チームの設計・コーディング規約・ドキュメント整備に大きく依存します。
長期間にわたって運用される基幹業務システムでは、COBOL の持つ「ドキュメント性の高さ」が、結果的に大きな武器となっているケースが少なくありません。
COBOL を「正しく評価」したうえで選択する
ここまで、主に Java と比較しながら COBOL の強みを、バッチ性能、国際標準・計算精度、将来性(標準の継続的な進化)、ドキュメント性・メンテナンス性という観点から整理しました。
もちろん、Java をはじめとするモダンな言語・プラットフォームにも、豊富なライブラリ・フレームワーク、Web やモバイルとの親和性、開発者人口の多さなど、多くの利点があります。大事なのは、「COBOL は古いからダメ」「Java は新しいから良い」といったイメージだけで判断せず、それぞれの技術の特性を理解したうえで、
- どの業務には何が向いているのか
- どこまでを置き換え、どこを残すのか
- 共存・連携のアーキテクチャをどう設計するか
を検討することだと考えています。レガシー刷新やマイグレーションを検討されている方は、ぜひ一度、COBOL の本来の強みを踏まえて、最適な構成を考えてみてください。
もっとも、ここまで述べてきたように COBOL 自体の強みや将来性を正しく評価したとしても、現実問題として「COBOL エンジニアをどう確保するか」という課題は残ります。人財をどう確保するかは、避けて通れない重要なテーマです。
この点についての考え方やアプローチは、こちらの記事に詳しく記載していますので、あわせてご参照ください。
→ 「レガシーから“主役”へ COBOLの現状と未来に求められる人財像」





