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そのAI活用、本当に大丈夫? ― 生成AIに“任せすぎ”が失敗を生む5つの理由【第2回】

レガシーシステムのマイグレーションでAI活用を考える際、「どんな分析ツールを使うか」「どのAIモデルの精度が高いか」といった“ツール選び”に議論が集中しがちです。しかし、本当に重要なのは、そのツールを「誰が」「どのような観点」で使いこなすのかという視点です。

同じAIや解析ツールを使っていても、その結果をどこまで受け入れるのか、どこから先を人が判断してプロジェクト全体を設計していくのかによって、最終的なマイグレーションの品質は大きく変わります。「どのツールを選ぶか」以上に、「そのツールをどう理解し、使いこなす人財がいるか」が重要です。

いま、AIでどこまでできるのか

まずは、現時点でAIにどこまで任せられるのかを整理していきます。AIを活用すれば、マイグレーションやレガシーシステム解析の生産性を大きく向上させられます。現時点で任せられる主な3点です。

ソース解析・仕様整理の「下ごしらえ」

AIは、レガシーシステムを理解するうえで必要となる膨大な情報の「読み解き」と「整理」に向いています。COBOLやPL/Iといったコードから処理概要コメントを自動生成したり、変数名・ファイル名・テーブル名を一覧化しておおよその用途を推定したりすることが可能です。また、既存の設計書や運用マニュアルから要点をまとめたり、画面ごとの入出力項目や主要バッチ処理のフローについて、説明文のドラフトを作成したりすることもできます。

テスト観点・移行計画の「たたき台作成」

AIは、テスト設計や移行計画の「たたき台」を用意する場面で有効です。既存の仕様書や運用手順書、画面遷移図などを入力として与えることで、たたき台を短時間で作成できます。

例えば、想定されるテスト観点の一覧や、正常系・代表的な異常系を含んだ基本的なテストケース案を自動で洗い出すことが可能です。もちろん、これらはあくまで“下書き”でありブラッシュアップしていくことが前提です。それでも、「ゼロからホワイトボードに書き出して検討を始める」場合と比べると、検討スピードの向上と抜け漏れの防止という両面で効果が期待できます。

人が見落としがちな“パターン”の指摘

AIは、大量のテキストやコードの中からパターンを検出することを得意としており、人が見落としがちなパターンをあぶり出すのに役立ちます。たとえば、ほぼ同じ処理をしているはずなのに条件分岐が微妙に異なる箇所を指摘したり、あるモジュールにはエラー処理が入っている一方で、別のモジュールにはそれがないといった差分を自動的に洗い出したりできます。

95%は自動化できる時代になったが…

近年の自動変換ツールは、優秀です。全体の「およそ95%」は自動あるいは半自動で変換できます。
しかし、AIや自動変換ツールを駆使しても、マイグレーションのすべてを機械任せにすることはできません。残りの「約5%」は変換できず残ります。

この「自動変換できない5%」は、たとえば次のようなものです。

  • 長年の運用を通じて積み上がってきた暗黙の業務ノウハウや現場ごとのローカルルール
  • 特定の取引先や顧客を前提にした例外的な個別実装
  • 旧来のハードウェアやミドルウェアに強く依存した処理(デバイス制御や特定ベンダ固有機能など)
  • セキュリティやコンプライアンスの観点から単純な「移し替え」が許されないインターフェースやデータの取り扱い
  • 新しいアーキテクチャに合わせてビジネスプロセスそのものを再設計すべき領域など

自動変換できない「5%」が致命傷になる理由

AIや自動変換ツールでは、コードの「形」をなぞることはできても、その背後にある業務ロジックの意味までは理解できません。そのため、「技術的には正しいが、業務的には誤っている変換」が紛れ込みやすくなります。この約5%の領域を「AIがOKと言っているから大丈夫だろう」と十分な検証なしに本番へ持ち込むと、リリース後に現場で大きなトラブルとなって現れます。

たとえば、

  • 月末・月初だけ特定ジョブをあえて遅延させていた理由があったにもかかわらず一律にスケジュールが変えられてしまうケース
  • 会計処理の締め日がシステム上と現場運用で微妙に異なっていた事実が見落とされるケース
  • 一部の取引先だけ例外的なデータ形式を受け入れるロジックが埋め込まれていたのに標準化されてしまうケースなど

ツールは、こうした「理由」や背景事情までは理解しません。その結果、売上や在庫の数字が一晩でおかしくなる、特定条件の取引だけエラーになり、気づいたときには数週間分が未処理になっている、年度末の繁忙期に限ってシステムが重くなる・止まるといった、現場にとって致命的な不具合として表面化します。

だからこそ、この自動変換できない5%に真正面から向き合い、業務とシステムの両方を理解したうえで設計し直せる人材の存在が、AI時代のマイグレーションを成功させる鍵となるのです。

AIを活かすうえでも「レガシーに詳しい人財」が必要な理由

AIによって、ソース解析や仕様整理、テスト観点の洗い出しといった作業は、これまでよりもはるかに効率的に進められるようになりました。しかし、その成果を「業務として本当に正しいもの」に仕上げるには、レガシーシステムと業務の双方を深く理解した人の存在が不可欠です。

レガシー経験のある技術者は、古いCOBOLやPL/Iのコードから開発当時の意図を読み解き、過去の保守で繰り返し発生してきたトラブルとその回避策を体で覚えています。さらに、システムと現場業務のつながりを実体験として理解しているため、「形式的には正しいが、業務的にはおかしい」という違和感に気づくことができます。

AIや自動変換ツールが生み出した結果を、

  • 自社の業務ルールや歴史的な経緯に照らして妥当かどうか判断する
  • 暗黙の仕様やローカルルールが抜け落ちていないかチェックする
  • 必要に応じて設計やプロセス自体を見直す

といった「最後の5%」の部分で支えるのが、まさにこうしたレガシー人財です。AIを鵜呑みにせず、業務とシステムの両面から検証・補正できる存在がいてこそ、95%を自動化したマイグレーションを“安全に完走させる”ことができます。

AIの力を最大限に活かすためにも、「AIに何を任せ、どこから先をレガシーに詳しい人が責任を持って見るのか」という役割分担を明確にし、その5%をきちんと担える人材・チームを確保しておくことが、これからのマイグレーションプロジェクトの成否を分けるポイントと言えるでしょう。

まとめ:AIとレガシー人財をどう組み合わせるか


AIは、ソース解析や仕様整理、テスト観点の洗い出しなど、マイグレーションの前工程を大きく効率化できます。一方で、長年の運用で生まれた暗黙知やローカルルール、例外ロジック、旧来基盤への依存など、「自動変換できない5%」は依然として人の判断が欠かせません。

その5%を見極め、業務とシステムの両面から設計し直せるのが、レガシーに詳しい人財です。
これからのマイグレーションでは、

  • 繰り返し作業や整理はAI・ツールに任せる
  • 最後の5%の判断と設計をレガシー人材が担う

という役割分担を前提に、「最後の5%を任せられるレガシー専門家やパートナーとどう連携するか」を早い段階から検討しておくことが、AI時代のマイグレーションを安全に完走させるための鍵になると言えるでしょう。

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