そのAI活用、本当に大丈夫? ― 生成AIに“任せすぎ”が失敗を生む5つの理由【第1回】

第1回―レガシー刷新を成功させる「人とAI」の正しい役割分担
流行りだからとAIに飛びつくと痛い目にあう
ここ数年、「AIでレガシー刷新」「AIで自動変換」といった言葉をよく目にします。
その勢いに乗って、
「とりあえずAIツールを入れれば、古いシステムも一気に最新化できるのでは?」
「人手不足だし、AIでマイグレーションを自動化してしまおう」
と考える企業も少なくありません。
しかし、流行りだからとAIに飛びつき、レガシーシステムを一気に刷新しようとすると、高い確率で痛い目にあいます。
理由はシンプルで、「AIは魔法ではなく、あくまでツールだから」です。
ツールがどれだけ高度になっても、それだけでは現場は前に進みません。
レガシーマイグレーションでは、「どんなツールを使うか」以上に、「そのツールをどう使いこなすか」が問われます。
近年は、自動変換ツールやマイグレーション支援サービスの進化により、レガシーからの移行の“95%”は自動化できるようになりました。コード変換、スキーマ変換、バッチのスケジューリング——多くの作業は機械的に置き換えられます。しかし問題は、残り“5%”の「自動では変換しきれない部分」です。ここを安易に見逃したり、「まあ大丈夫だろう」と流してしまうと、移行後の本番環境でシステムが“火を噴く”ことになります。
だからこそ、マイグレーションの現場では「橋渡し役」が重要です。
ツールが変換した結果を読み解き、業務ロジックやデータの意味を踏まえて、「これは正しいのか」「ここは直すべきか」を判断できる人。そうした人材や企業、そして検証ノウハウを持ったコミュニティ等が、レガシー刷新を支える土台になります。
「変換できない5%」という落とし穴
レガシーマイグレーションに30年取り組んできた中で、私たち自身も、同業他社も、「最後の5%の手作業変換」が原因で炎上したプロジェクトを数多く経験し、目の当たりにしてきました。なぜ、そこでつまずくのか。システム刷新の本質的な難しさは、「だいたいうまくいけばよい」では決して済まされない点にあります。システムは細部まで正しく動いてはじめて“完了”であり、「動くまでが完了」という大前提を忘れてはいけません。
この30年で、私たちは実に多くの変換ツールを見てきました。変換率95%をうたうツール、“ほぼ”100%を掲げるツール、海外で豊富な実績があると宣伝されるツール……。しかし、そうしたツールを導入しても、多くの企業が失敗を繰り返しているのが現実です。極端にいえば、ツールの変換率が何%かという数字自体には、それほど意味がありません。本当に重要なのは、残り数%の検証と動作確認、つまり「ラストワンマイル」をどのように管理し、やり切るのかに尽きるのです。
AIはあくまで“ツール”にすぎない
AIはたしかに強力です。ただし、それは「正しい目的設定」と「適切な使い方」があってこそです。
・何を、どこまで、どの順番でレガシー刷新するのか
・既存のレガシー資産のどこにリスクが潜んでいるのか
・どの部分をAIで支援し、どこは人が判断すべきなのか
これらが曖昧なまま「AIにおまかせ」で進めてしまうと、
・想定外の工数増大
・現場との認識ギャップ
・ブラックボックス化した移行プロセス
といった問題が噴出します。
結局、火消しのために、より多くの工数とコストが必要になることも珍しくありません。
つまり、全体を俯瞰し、正しい設計を行う“人の観点”がないと、AIは力を発揮できないのです。
レガシー刷新に詳しい“人の観点”が必須
レガシー刷新は、単に「古いコードを新しい言語に書き換える」作業ではありません。
ビジネスプロセスの変遷、過去の運用・保守で蓄積された知見、業務部門に眠る暗黙知など、システムの外側にある「文脈」まで踏まえて判断する必要があります。
そこで重要になるのが、レガシー刷新に精通した“人”によるアドバイスやガイドです。
・どのレガシー資産を残し、どこを捨てるべきか
・どの単位で分割・段階移行するとリスクが抑えられるか
・現場を巻き込みながら進めるために、どの様にコミュニケーションととっていくか
こうした判断は、AI単体では行えません。
AIがどれだけ優れた分析結果や変換案を提示しても、「ではどう進めるべきか」を決めるのは、やはり人の役目です。
まずはAIで“レガシー刷新前の準備”を固める
レガシー刷新で失敗が起きる原因の多くは、「設計」や「準備」よりも先に、いきなり“作業”に入ってしまうことにあります。
AIツールも同じで、「とりあえず入れてみる」「まずはコード変換だけやってみる」という進め方では、むしろ混乱や手戻りを招きがちです。
そこで重要になるのが、“レガシー刷新前の準備”です。
AI を用いることで、
・レガシー資産の棚卸し/可視化:どんなアプリケーションがあり、どの技術スタックで動き、どの業務に紐づいているのか
・技術的負債やリスクの洗い出し:老朽化したミドルウェア、属人化したバッチ、テスト不能なブラックボックス部分など
・ステップ別のマイグレーションシナリオ検討:どこから着手し、どこを後回しにし、どのような順番で段階的に移行するか
といった「まず把握すべきこと」「先に決めておくべきこと」を、短期間で整理できます。
この段階では、まだ“全部をAIに任せて変換する”必要はありません。
むしろ、「今ある資産を正しく理解し、移行の全体像と優先順位を見極める」ことこそが、AIに最も向いている使い方です。
人とAIが組み合わさることで生まれる価値
そして、このAI による分析結果をもとに人が、
・どこを残し、どこを捨てるべきか
・どの単位で区切って移行すると現場の負担が少ないか
・どのフェーズでどのAI支援を使うと効果的か
といった具体的な戦略へと落とし込んでいきます。
つまり、AI は「いきなり変換するツール」ではなく、まずは
「マイグレーションを成功させるための前準備を行う為に使う」のが本来の姿です。
流行りに乗って拙速に着手するのではなく、まずは AI で“レガシー刷新前の準備”をしっかり固める。
そのうえで、人の知見と組み合わせることで、成功確度の高いマイグレーションが実現できます。
AIで準備し、人とともにレガシー刷新を成功させる
いきなりAIにとびつくレガシー刷新は危険です。AIはあくまでツールであり、レガシー刷新に詳しい人の観点が不可欠です。
まずは AI で“レガシー刷新前の準備”をしっかり行う。そのうえで、人の知見と組み合わせて進めることで成功確度の高いマイグレーションが実現できます。AIと人、その両方を最大限に活かすことが、成功への最短ルートです。しっかり準備して、レガシー刷新を成功させましょう。
次回は、分析ツールを“使う人”の視点がなぜ重要なのか解説します。
そのAI活用、本当に大丈夫? ― 生成AIに“任せすぎ”が失敗を生む5つの理由【第2回】─分析ツールを“使う人”の視点がなぜ重要なのか




