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“7割同じ”が正しい選択?──パッケージ導入で見落とされる“現場の知恵”【レガシー侍】

「単純化はしばしば理解を遠ざける。」
― カール・ポパー(Karl Popper)

「Fit to Standard」の本当の意義

近年、業務アプリケーションやERP導入において「Fit to Standard(標準への合わせ込み)」は常識となり、特にSaaS型ERPでは「7割は標準でカバーできる」と語られます。
この考え方自体は、正しく理解すれば極めて合理的です。

国際会計基準(IFRS)
税制や法令順守(コンプライアンス)
環境報告やガバナンスに関わるレポーティング
国をまたぐ業務ルールの標準化

これらの領域では、グローバルスタンダードに業務を合わせることで競争力が高まります。
つまり、「車輪の再発明」は避けるべきなのです。
パッケージは悪ではありません。むしろ、「企業が共通の“言語”を持つための有効な手段です。

パッケージでカバーすべき“共通語”

企業活動のすべてが独自である必要はありません。

むしろ、業務の一定割合は “汎用化された仕組み”で効率化する方が合理的です。

月次決算プロセス
勤怠・給与計算
会計仕訳や税務処理
請求・支払管理

これらの業務は多くの企業で共通しており、完成度の高いパッケージを活用することで、人材とコストを“差別化すべき領域”に集中できます。
つまり、パッケージは何を独自にすべきか」を線引きするための道具なのです。

“7割同じ”を信じてはいけない業務領域とは

一方で、どうしてもパッケージ標準の“外側”にある業務も存在します。

自社特有の業界慣行や取引ルール
特定顧客への対応ノウハウ
商圏や地域ごとの例外フロー
現場担当者が担う安全弁的な判断

これらを無理にFitさせると、「標準に合わせたけれど、現場が使えない」という事態が発生します。
標準化は万能ではありません。
“違い”の部分こそ企業らしさ、つまり競争優位が宿る領域なのです。

パッケージ導入で失われる“非機能の知”

導入プロジェクトで見落とされがちなのが、業務を陰で支える「非機能の知」、すなわち背景知です。

非公式だけど実際に回っている業務フロー
特定顧客だけに使われる例外ルール
文書化されない現場判断の勘所

これらは、標準プロセスには表現されないが、止めると現場が止まる“見えない機能”です。
クラウドやSaaS移行では、こうした知恵が“サイレントロス”として失われがちです。

AWS移行でも、例外処理や判断基準を Lambda やワークフローにどう翻訳するかが鍵となります。

レガシー侍が目利きする「捨ててはいけないもの」

レガシー侍の役割は、過去の業務を「すべて残す」ことではありません。
私たちが担うべきは、「守るべきもの」と「委ねるべきもの」の見極め」です。

守るべきは:独自の判断基準・例外処理・現場知
委ねるべきは:制度化された会計・給与・法令対応
翻訳すべきは:現在の”クセ”を、未来の仕組みにどう変換するか

その“目利き力”こそが、レガシー侍の真骨頂です。

おわりに:共通化と継承のハイブリッドが強さをつくる

パッケージは、使い方を誤らなければ最も有効な経営ツールです。
ただし、標準に「合わせる」ことと、価値を「手放す」ことは同義ではありません。
DXの本質は、
自社の強みがどこにあるかを見極め
強みを“守りながら”未来の仕組みを設計すること
にあります。

AWSやSaaSを活かすうえでも、
標準と非標準、共通化と継承をどう編み合わせるかが問われています。
その“重ね合わせ”の思考こそ、これからのIT戦略のコアになるはずです。

📍次回予告|Vol.4(予定)
「ブラックボックスはなぜ生まれるのか?──レガシーの“見えなさ”に挑む」
複雑化したシステムが“読めなくなる”構造と、それを可視化するアプローチを解き明かします。

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