レガシーから“主役”へ COBOLの現状と未来に求められる人財像

はじめに
皆さんは「COBOL」という言語にどのようなイメージをお持ちでしょうか?おそらく「古い」「難しそう」「若手がやりたがらない」といった声が多いかもしれません。実際、現場でも「COBOLはベテランの担当で、若手からは敬遠されがち」といった話をよく耳にします。
なぜCOBOLが敬遠されるのでしょうか?
レガシーシステムといえばCOBOL。長年にわたり基幹系システムを支えてきましたが、時代の変化とともに「COBOLはやりたくない」「もっと新しい技術に触れたい」と感じるエンジニアが増えてきたのも事実です。COBOLのバトンが先輩から後輩へとうまく引き継がれず、若手エンジニアの採用も難しくなっています。
そのため、多くの企業がCOBOLシステムをJavaなどにリプレイスしようとしています。確かにJavaはCOBOLに比べて新しく、求人ニーズも高い言語です。しかし、全てのシステムを一斉にJavaへ移行しようとすると、現場とのギャップが生まれたり、新たな課題が発生するケースもあるのです。
では、COBOLにはどのようなデメリットがあるのでしょうか?現場でよく挙げられるCOBOLのデメリットをまとめました。
人材不足
COBOLを扱えるエンジニアの高齢化が進み、若手技術者が少ないため、保守・運用要員の確保が難しくなっています。
モダンな開発環境への対応が困難
現代的な開発手法(クラウド統合など)やツールとの親和性が低く、バージョン管理や自動テストなど、現代の開発ワークフローに馴染みにくい側面があります。
学習コスト・参入障壁
現代のプログラマーにとって直感的でない文法や記述が多く、参考書・学習リソース・コミュニティも他言語に比べて少ないのが現状です。
保守コストが高い
レガシーシステムの複雑化やドキュメント不足により、仕様や意図を把握しづらいことが多く、ソースコードの変更にともないテストやレビュー作業が増えやすい傾向にあります。
最新技術との連携が難しい
Web APIやクラウドサービス、モバイルなど、最新技術との連携が難しく、新しい機能追加や他システムとの連携の度に大きな手間がかかります。
構文の冗長性
可読性は高いものの、冗長な記述が多く、コーディング量が増えやすいです。
パフォーマンスや拡張性の限界
現代の大規模・高トランザクションシステムでは性能や拡張性に課題が残る場合があります。
かつてのCOBOLの課題は、今こう解決されている!
COBOLは信頼性が高い一方で、人材・技術の両面で将来的なリスクやコスト増につながる要素を持っています。そのため、多くの企業が他言語への移行やシステム再構築に乗り出しているのです。
しかし、時代とともにこうした課題の多くは技術革新やコミュニティの努力によって解決されつつあります。、「COBOLのデメリット」といわれてきた点がどのように改善されてきたのかをご紹介します。
人材不足問題の解消
かつてはCOBOL技術者の高齢化が課題とされていました。しかし、近年は大手IT企業や自治体による再教育プログラム、大学のリスキリング講座、オンライン教材の充実など、若手でもCOBOLを学べる環境が整っています。たとえばオンライン講座や、コミュニティも活性化するなど、世代を超えたCOBOL人財の育成が進んでいます。
モダンな開発環境への対応
従来のCOBOL開発環境は、クラウドやバージョン管理システムとの親和性が低いとされていました。今ではVisual Studio Codeなど人気IDE向けのCOBOLプラグインや、Git連携ソリューションが提供されています。また、CI/CD実現のための自動テストツールも普及し、現代的な開発ワークフローを取り入れることも可能になっています。
保守性とドキュメント不足の解決
レガシーなCOBOL資産についても、AIを活用した自動コード解析やドキュメント化ツール、動作シミュレーションサービスの普及により、仕様把握やリファクタリングが簡単になりました。これにより、システム維持のコストが大きく低減しています。
最新技術との連携
Web APIやクラウドとの連携が難しいという印象も、過去のものになりつつあります。REST API連携やクラウド上でのCOBOL実行環境が登場し、既存COBOL資産を最新技術と組み合わせて活用できる時代となっています。
これから求められるのは“多言語を扱える人財”
これからの時代、COBOLもJavaも、目的や環境に応じて柔軟に使いこなせるエンジニアがますます必要とされます。一つの言語だけを極めるのではなく、COBOLの資産も理解しつつ、新しい技術にも挑戦できる――そんな“マルチエンジニア”こそが、これからのIT現場に求められる人財です。
かつて「人材不足」「保守性」「最新技術との連携」といったCOBOLの課題は、今では多くの解決策が提示されています。COBOLは「レガシー」であるどころか、現代のITシステムを支える主役として再評価されつつあります。COBOL運用に不安がある方も、最新のツールや教育機会を活用してみてはいかがでしょうか。
「COBOLだけをやらせるから、COBOL離れが進む」。若手にCOBOLしか担当させなかったり、COBOLだけでチームを固めてしまうのは、かえってキャリアの幅を狭めてしまう原因にもなりかねません。COBOLの知識も新しい世界への“橋渡し”として活かせるのです。
経営層のメッセージが鍵になる
多言語エンジニアを育てるために最も重要なのが、経営やマネジメント層からの明確なメッセージです。「これからはCOBOLもJavaも幅広く扱える人財へ成長してほしい」「COBOLも必要な技術の一つとして誇りを持ってほしい」。こうしたメッセージが伝わることで現場の雰囲気も変わり、若手のモチベーション向上にもつながります。
個人のキャリアにとっても、複数言語やレガシー技術の知見を持つことは大きな強みです。組織にとっても、システム資産の保守・発展のために“多言語に精通した人財”は間違いなく貴重な存在となります。
おわりに
COBOLは長年基幹系システムで使われてきた信頼性の高い言語ですが、「古い」「若手がやりたがらない」と敬遠され、技術者の高齢化や若手不足、モダンな開発環境への非対応、学習コストや保守性・拡張性の課題などが指摘されてきました。そのため、多くの企業がJavaなど他言語へのリプレイスを進めています。
しかし近年、再教育プログラムやコミュニティ活動、ツールの進化によって、COBOL技術者の育成や現代的な開発・保守、最新技術との連携など、多くの課題は解決されつつあります。
今後は、COBOLも新しい言語も柔軟に使いこなせる“多言語エンジニア”の重要性が高まります。経営層が前向きなメッセージを発信し、多様な技術を扱える人財を育てることが、組織・個人の双方で大きな強みとなります。
「COBOL=オワコン」ではなく、COBOL経験も新技術も活かせるエンジニアを目指し、価値ある人財の育成を進めていくことが求められています。





