Cloud Service for オフコン サービス終了に伴う移行方式について――第1回:リホスト/マイグレーション時の注意点

はじめに
「Cloud Service for オフコン」が、2031年3月末をもってサービス終了となることが発表されました。このサービスは、オフコンシステムを富士通データセンター上で安全かつ安定的に運用するためのクラウドサービスとして、多くの企業に利用されてきました。
しかしながら、富士通のオフコン事業の戦略転換に伴い、サービスの継続提供が困難となり、今回の決定に至ったとのことです。これに伴い、オフコンシステムを利用している企業は、オープンシステムへの移行を検討する必要があります。
移行のすすめ
「終了はまだ先だからまだ大丈夫…」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、オフコンシステムのような基幹系システムの移行には長い期間と多くの準備が必要です。
特に長年運用してきたオフコンシステムは、現状の棚卸しから新システムへの要件整理、移行方法の選定、そして新たな業務フローの策定など、検討すべきポイントが数多く存在します。
余裕を持って早めに移行プロジェクトを立ち上げることで、不測のトラブルやシステム停止期間のリスクも最小限に抑えることができます。
移行をスムーズに進めるためのポイント
スムーズかつ安全な移行を進めるためには、以下の観点をしっかり抑えておきましょう。
現行システムの調査
どのシステムや業務が現行オフコン環境で動いているのか、またそれぞれに必要な要件は何かをしっかりと棚卸ししましょう。可視化は、移行プロジェクトの第一歩です。
移行方法の選択
一口にオープンシステムへの移行と言っても移行には、様々な選択肢があります。
・リホスト(マイグレーション):現行アプリケーションを極力変更せずに、新しいハードウェアやOS上に移行する方法
・リライト(改修):現行のソースコードを新しい技術や言語に書き換えて移行する方法
・リプレース:パッケージソフトウェアやSaaSなど、全く新しいシステムに置き換える方法
自社の事情に合った方法を慎重に検討しましょう。信頼できるベンダーとの協力がスムーズな移行に繋がります。
移行計画の策定
移行期間、費用、ダウンタイムやリスクを十分に考慮しつつ、現実的で無理のない計画を立てることが大切です。
移行ツールの活用
作業効率化やエラー低減のため、実績のある移行ツールの活用も検討をおすすめします。専門企業に相談するのも一つの手です。
リホスト/マイグレーション時の注意点
弊社では、移行コスト、移行スケジュール、移行リスクの観点から、現行アプリケーションを極力変更せずに、新しいハードウェアやOS上に移行する「リホスト/マイグレーション」を推奨いたします。
特に富士通オフコン(ASPシリーズ)をリホスト/マイグレーションする場合、単なるハードウェアの置き換えではなく、アーキテクチャや言語、周辺装置、運用形態の違いを把握・考慮することが重要です。
具体的には、以下の観点で検討・対応を進める必要があります。
文字コードの違い(富士通オフコンはEBCDIC+JEFコード)
オフコン特有の文字コードにより、システム資産をSJISやUTF-8など、一般的なオープン系文字コードへ変換する作業が発生します。また、独自定義した外字の扱い方についても事前に検討する必要があります。
COBOL-Gなど専用言語資産
ASP COBOL-Gは富士通独自の拡張機能が多く含まれており、標準COBOLや他社COBOLでは動作しない文法・機能が存在します。互換性のある移行先製品の選定や、ソースコード変換ツールの活用により、非対応箇所を洗い出して修正する必要があります。
データアクセス(ISAM / G-ISAM)
オフコン独自の索引順ファイル(ISAMファイル)をRDB(Oracle, SQL Server等)へ置き換えるのか、もしくはISAM互換ミドルウェアを利用するのか検討しましょう。データ移行における性能差や排他制御、運用面の違いにも十分注意してください。
帳票出力(プリンタ制御)
オフコンではラインプリンタや複写式伝票など、専用帳票レイアウトの出力制御が多用されています。リホスト後はPDF生成やレーザープリンタでの運用に移行するケースがほとんどのため、帳票設計書の見直しや帳票設計の再構築が必要です。
ジョブ制御・バッチ処理
ASP独自のジョブ制御言語(CL)を、バッチファイルやシェルスクリプトへ変換し、さらに運用スケジューラがある場合にはWindows/Linux系の運用管理ツール(JP1、Systemwalker等)へ移行する手順も検討しましょう。
OS、オンプレミス、クラウド環境の選択
リホスト先の環境として、Windows ServerやLinux Serverのどちらを選択するか、またクラウド/オンプレミスの運用形態についても十分な検討が必要です。
バックアップ、復元方式
バックアップソフトや実行スケジュール、媒体(HDD、SSD、TAPEなど)、および復元手順やBCP(事業継続計画)についても、従来との違いを意識しつつ新たに策定することが重要です。
資産の棚卸とスリム化
現行システム資産の棚卸をしっかり行い、移行対象とするべき資産を明確に抽出しましょう。これを機に、不要な資産の整理やスリム化を図ることも、今後の運用負担軽減につながります。
まとめ
「Cloud Service for オフコン」の終了は、利用企業にとって大きな転換期です。しかし、早めに準備を始めることで、移行リスクを減らし、将来的なIT基盤の最適化や業務効率の向上を実現することができます。
オフコンのリホスト/マイグレーションは多岐にわたる検討・対応事項があるため、詳細な現状分析と計画立案が成功のカギとなります。まずは現行システムの調査から始め、移行の方向性を見定めましょう。
移行支援に実績のあるパートナー企業のサポートも活用しながら、2031年3月末までの円滑な移行を目指しましょう。今からの準備が、将来の安定運用につながります。