PHPマイグレーションの進め方 -前編-

はじめに
PHPアプリケーションのマイグレーションは、パフォーマンスの向上、セキュリティ強化、新機能の利用を可能にする重要なプロセスです。この記事では、PHPマイグレーションを成功させるための主要なステップと考慮事項について前編と後編に分けて解説いたします。
前編では、PHP 7系以下の現状とリスク、PHP/Laravel マイグレーションの課題、マイグレーション戦略の選択について解説いたします。
PHP 7系以下の現状とリスク
PHP 7系以下はすでに公式サポートが終了しています。 セキュリティアップデートが提供されないため、脆弱性が発見されても修正されず、セキュリティリスクが高まっています。
古いPHPバージョン、特にサポート切れのバージョンに関する技術情報や、そのバージョンに精通したエンジニアが少なくなっています。これにより、システムの保守・運用が困難になり、コストが増大する可能性があります。
古いPHPバージョンや、それに紐づく古いLaravelバージョン、その他のライブラリが古いまま、最新のOSやデータベースミドルウェアなどをアップデートした場合、古くなるほど互換性に問題が生じる可能性があります。
逆にPHP、Laravelバージョンを上げると古いOSやミドルウェアが対応しない場合がありますので合わせて検討する必要があります。
PHP/Laravel マイグレーションの課題
言語仕様の変更と非互換性
PHP 7系からPHP 8系の間には、下位互換性のない変更点、推奨されなくなる機能、削除された関数、新機能などが多く発生します。 特にPHP 8.0以降ではJITコンパイラが導入され、一部の古い書き方や非推奨の機能が削除されているため、そのままでは新しいPHPバージョンで実行できない場合があります。
Laravelバージョンの依存関係と変更
Laravelは特定のPHPバージョンをサポートしています。PHP 7.1からPHP 8.4へ移行するには、対応するLaravelバージョン(例: PHP7.1ならLaravel 5.x/6.xあたり、PHP8.4ならLaravel 10.x/11.x)へ段階的にアップグレードする必要があります。
各Laravelバージョン間でも、ルーティング、Eloquent、Bladeテンプレートなど、様々な仕様変更や非推奨化、新機能の追加がありコード修正が必要となります。
依存ライブラリ (Composerパッケージ) の互換性
アプリケーションで使用しているサードパーティのComposerパッケージが、新しいPHPバージョンやLaravelバージョンに対応していない場合があります。対応している最新バージョンへのアップデートが必要ですが、大幅な変更があったり、開発が停止している場合は代替ライブラリの選定や自前での実装が必要になります。
自動変換ツールの限界と手修正
PHPにはRectorのようなコード自動変換ツールや、PHPStanのような静的解析ツールが存在します。またLaravelに関してはLaravelShift「https://laravelshift.com/」というサービスも存在しておりこれらはマイグレーションの効率化に役立ちますが、すべてのコードを完全に自動で、かつ意図通りに変換できるわけではありません。
特に複雑なロジックや、特定の古い書き方、依存ライブラリに関連する部分は、大量の手作業による修正が必要となる可能性が高いです。
マイグレーション戦略の選択
マイグレーションにはいくつかの戦略があります。アプリケーションの規模と複雑性に応じて最適な戦略を選択します。
インプレースアップグレード
同じ環境内でPHPバージョンを直接アップグレードします。小規模なアプリケーションに適しています。
並行稼働
新しい環境で新しいPHPバージョンをセットアップし、既存の環境と並行して稼働させます。大規模なアプリケーションやダウンタイムを最小限に抑えたい場合に有効です。
段階的移行
アプリケーションの一部ずつを新しいPHPバージョンやフレームワークに移行します。リスクを分散し、より管理しやすい移行を可能にします。
後編について
後編では、PHP/Laravel マイグレーションの成功への秘訣について解説いたします。
PHPマイグレーションの進め方 -後編-