【解説】物流倉庫業務④(ピッキング)

物流倉庫では、商品を生産者から消費者へ届けるために、様々な業務が行われています。 最近では、労働力不足やEC市場の拡大を背景に、デジタル化や標準化など業務改善が急務です。 複数回にわたり、物流倉庫で行われる業務と改善点を紹介していきます。

はじめに

本記事は物流倉庫業務とその改善点を紹介するシリーズ記事の第4回です。

過去の記事はこちら
【説明】物流倉庫業務①(入荷・出荷)
【説明】物流倉庫業務②(入荷検品・出荷検品)
【説明】物流倉庫業務③(棚入れ・補充)

物流倉庫業務紹介

今回は、物流倉庫で行われる業務のなかから、「ピッキング」について紹介します。

ピッキングについて

まずは、ピッキングの業務内容について紹介します。
本記事で紹介する業務内容はあくまで一例です。

ピッキングとは

ピッキングとは、出荷指示をもとに棚から商品を取り出すことを指します。
本記事では、「シングルオーダーピッキング」「マルチオーダーピッキング」「トータルピッキング」「定点ピッキング」の4つのピッキング方法を紹介します。

シングルオーダーピッキング

シングルオーダーピッキングとは、オーダーごとに出荷対象を集める方法のことです。
作業者やロボットがオーダーの数だけピッキングエリアを回る必要があります。
別名「摘み取り方式」とも呼ばれます。
シングルオーダーピッキングには、下記のメリットとデメリットがあります。

メリット
 1.ピッキングの精度が高い
 2.オーダーを受けてから、ピッキング完了までの時間が短い

デメリット
 1.作業者の歩行距離が長い
 2.倉庫全体の出荷数に対して、ピッキングの時間や手間が多い

マルチオーダーピッキング

マルチオーダーピッキングとは、複数オーダーの出荷対象をまとめて集めつつ、同時にオーダーごとの仕分けを行う方法のことです。
複数の間口があるピッキングカートを使用し、ピッキングした商品を対象の間口に投入する手法が一般的です。
後述のトータルピッキングも広義ではこれに含まれますが、ピッキングと同時に仕分ける方法を特にマルチオーダーピッキングと呼ぶ傾向があります。
マルチオーダーピッキングには、下記のメリットとデメリットがあります。

メリット
 1.シングルオーダーピッキングに比べて、作業者の歩行距離が短い
 2.倉庫全体の出荷数に対して、ピッキングの効率が良い

デメリット
 1.ピッキングと仕分けを同時に行うため、ミスが発生するリスクが高い
 2.オーダーをまとめてからピッキングを行うため、オーダーを受けてからピッキング完了までに時間がかかる

トータルピッキング

トータルピッキングとは、複数のオーダーの出荷対象をまとめて集めたあと、オーダー別に仕分けする方法のことです。
作業者やロボットがピッキングエリアから出荷対象を集め、仕分け場に運んだあと、作業者がオーダー別に仕分ける必要があります。
別名「種まき方式」とも呼ばれます。
トータルピッキングには、下記のメリットとデメリットがあります。

メリット
 1.シングルオーダーピッキングに比べて、作業者の歩行距離が短い
 2.倉庫全体の出荷数に対して、ピッキングの効率が良い

デメリット
 1.仕分けの工程が発生するため、仕分けを行うスペースや作業者が必要になる
 2.オーダーをまとめてからピッキングを行うため、オーダーを受けてからピッキング完了までに時間がかかる

定点ピッキング

定点ピッキングとは、作業者は決まった作業場に留まり、ロボットが作業者のところへ棚を運び、作業者が棚からピッキングを行う方法のことです。
定点ピッキングそのもの、または、作業者のもとまで棚を運ぶロボットのことをGTPと言います。
定点ピッキングには、下記のメリットとデメリットがあります。

メリット
 1.作業者の移動が不要になるため、作業者の負担の軽減や省人化が見込める
 2.作業者が通るスペースが不要になるため、保管場所の縮小が見込める
 3.移動の手間なく次々とピッキングを行うことができるため、ピッキングの効率が良い

デメリット
 1.ロボットの導入にコストがかかる
 2.導入の際、保管場所や作業場のレイアウト変更が必要になる

業務の改善点

続いて、ピッキングを省人化や効率化するための改善例を2点紹介します。

ピッキング方式の見直し

上記で4つのピッキング方式を紹介しましたが、倉庫の特徴に適した方式の導入によって効率化を図ることができます。
それぞれどのような場合に適しているのかを下記に示します。

 1.シングルオーダーピッキング:商品の種類が多い場合、総出荷数が少ない場合
 2.マルチオーダーピッキング:ピッキングの効率化を図りたいが、仕分け場のスペースがない場合
 3.トータルピッキング:商品の種類が少ない場合、総出荷数が多い場合
 4.定点ピッキング:商品の数が多く、延床面積が広い大規模な倉庫である場合

ABC分析の実施

ABC分析とは、出荷頻度によって商品をA、B、Cに分類し、商品の重要度を分析する方法のことです。
出荷頻度の高い商品は通路に近い場所や手が届きやすい場所に配置し、出荷頻度が低い商品は通路から遠い場所やピッキングに時間がかかる場所に配置します。
ABC分析を実施すると、下記のメリットがあります。

メリット
 1.ピッキングの効率化が見込めること
 2.棚入れや補充もピッキングと同じ経路で行う場合、棚入れや補充も効率化が見込めること

上記のメリットがある一方、ABC分析による商品の配置には下記の懸念事項もあります。

懸念事項
 1.出荷データを収集し、出荷頻度を分析する手間が必要になること
 2.出荷頻度の変動がある商品の場合は、都度ロケーションを変更する手間が必要になること

おわりに

本記事で紹介したのはピッキングの業務の最適化の一例であり、重要なことはお客様に最適な改善策を検討することです。
システムズは、長きにわたり物流業務に携わってきた経験を元に、お客様の現場へ伺い、今直面されている運用課題に対する解決策をご提案いたします。
現状の課題について改善をご検討される際は、一度お問い合わせください。

⇒過去の改善提案事例の紹介記事はこちら

⇒お問い合わせはこちら
※お問い合わせ区分は「ITコンサルティング(IT総合診断)」をお選びください。

⇒この次の記事はこちら『【解説】物流倉庫業務⑤(仕分け・流通加工・梱包)』