【AWS解説】AWSへの移行をスムーズに行うには準備が重要 移行サービスも活用しよう
目次
AWSへ移行する理由はどこにある?スムーズな移行を行うためのサービスも活用しよう
システムの更改やDXの推進を機に、クラウドへ移行する企業が増えています。特に、企業向けのクラウドサービスではシェアの高いAWSへ移行する企業も多いようです。それには、ハードウェアのリプレースが不要、無駄な支払いがない、いつでもどこからでも使える、最新技術を試したいなどの企業のニーズがあります。
しかし、オンプレミス環境とクラウド(AWS)では、まったく異なる環境です。そのため、移行前にはポイントや注意点をおさえておかなくてはなりません。この記事では、オンプレミス環境からAWSへの移行をスムーズに進めるために必要な準備やポイントを紹介します。
オンプレミス環境からクラウド(AWS)へ移行する理由
オンプレミス(on-premises)環境は、社内にサーバーやネットワーク回線などの設備を用意し、閉じた環境で運用するものです。一方、クラウドであるAWSへ移行すると、オンプレミス環境と比較していくつものメリットがあります。
なぜ多くの企業がAWSへ移行しているのか
企業がオンプレミス環境からクラウド(AWS)に移行するのには、オンプレミス環境に次のような要望があります。
- ハードウェアのリプレースが面倒
オンプレミス環境ではハードウェアのリプレースが3年から5年おきに必要になります。しかし、クラウド(AWS)へ移行すれば、ハードウェアのメンテナンスはAWSが行うので、自社での作業は不要です。 - 利用量やスペックの無駄をなくしたい
オンプレミス環境では一度導入したマシンのスペックを変更することはできません。一方、AWSであれば利用中でも用途やアクセス数に応じて柔軟にスペックや利用量を変更し、最適化することができます。 - いつでもどこからでも作業を可能にして業務効率化を実現したい
オンプレミス環境では、ほとんどの場合、作業をするには出勤しなくてはなりません。クラウドサービスなら、インターネットに接続している端末があればいつでもどこでも作業が可能です。働き方改革にも対応しやすくなります。 - 新しい技術に遅れないようにしたい
AWSのサービスは年々新しいものがリリースされており、既存のサービスにも機能の改善・追加が行われています。ほとんどはユーザーからのフィードバックをもとにした機能拡張や機能改善です
AWSへ移行するメリット
AWSに移行することには、上のような要望を満たすほかにも、次のようなメリットがあります。
- 初期費用が少ない
AWSは利用した分だけ支払う従量課金制なので、初期費用はかかりません。ほとんどの場合はOSのライセンス料も含まれています。企業側で必要なのは、最初に用意するアプリケーションの費用くらいです。 - 利用量を最適化していくことでコスト削減になる
AWSでは、利用目的やアクセス数に応じて柔軟に利用量を変更することができます。利用量を最適化することで、無駄な費用を払う必要はなくなり、結果的にコストダウンが可能です。
また、AWSはサービス開始以来、スケールメリットを生かして80回以上の値下げを行ってきました。 - サーバーのハードウェアやOSなどのメンテナンスが不要
AWSを利用すれば、サーバーやネットワークなどのインフラの運用管理はAWSが行ってくれます。自社スタッフが対応する必要はありません。また、ハードウェアや回線の災害対策もAWSに任せることができます。 - 高いパフォーマンスでダウンしにくいサーバー
AWSのデータベースは1 秒あたり 2,000 万件を超えるリクエストを処理可能という高速なパフォーマンスを実現しています。また高い可用性と信頼性で、サーバーダウンのリスクは最小限です。
また、AWSは物理的に独立したデータセンターや冗長性を維持したネットワーク、障害からの自動的なリカバリーなどで、高い信頼性、可用性、耐障害性を実現しています。 - 立ち上げが速い
新しくシステムを構築しようとする場合、オンプレミス環境では要件定義からの長い時間が必要です。AWSであればすでに用意されているリソースを組み合わせるだけなので、立ち上げに時間はかかりません。 - 強いセキュリティが評価されている
AWSではネットワークのインフラストラクチャ、アプリケーションなど様々な段階でセキュリティ対策を行い、データは暗号化して保護しています。 - 海外展開にも容易に対応可能
AWSのリージョンは世界各地に展開されており、拠点に近いリージョンを選択することができます。そのため、グローバル企業やこれから海外進出を考えている企業でも海外展開が容易です。日本国内でも、東京と大阪の2箇所から選択できます。
AWSへ移行するときの注意点
ただし、オンプレミス環境からAWSへ移行を行うときには、次のような点に注意が必要です。
- クラウドサービスにはオンプレミス環境と異なる特徴がある
業務システムでは、オンプレミス環境に向いた仕様や運用になっているものがあります。要件上クラウド環境のAWSで動かすのには向いていないものや、クラウド化するとデータ連携ができなくなるものも考えられます。まずは、現在運用しているシステム自体がAWSに移行可能か、クラウド環境での運用が可能かを検討しましょう。 - 運用によってはコストが上がってしまう
AWSでは、最初の導入コストを抑えることができますが、利用するサービスの組み合わせによっては毎月のランニングコストが高額になってしまいます。また、AWSは従量課金性なので、利用後にならないと料金が確定しません。常に稼働状況を把握し、必要な利用量を予測してコスト管理を行いましょう。 - セキュリティには注意する必要がある
AWSに限らず、クラウドサービスはインターネット回線を経由して利用するため、不正アクセスなどのリスクをゼロにすることはできません。できるだけVPN(Virtual Private Network)を利用するなど、セキュリティを強化する対策を取りましょう。 - カスタマイズ性には限界がある
AWSを利用するときには、シンプルな機能で提供されているサービスをいくつか組み合わせて欲しい機能を実現し、システムを構築します。規制の部品を組み合わせることになるため、カスタマイズ性には限界があり、自社にぴったり合った仕様にできないかもしれません。また、利用できるアプリケーションに制限がある場合もあります。完全なカスタマイズが必要ならオンプレミス環境が有利と言えるでしょう。
AWSへの移行の手順
AWSへの移行は、次のような手順で行います。
- 計画段階
移行元の把握:移行するシステムの構成や機能、連携を洗い出す
移行先の設計:そのまま移行できるのか、修正するならどのような構成にするか再設計する
PoCの実施:小規模な移行やサンプルデータで実証実験を行う - 移行段階
サーバー移行:サーバーを立ち上げ、サービスを組み合わせてシステムを構築する
データベース移行:サーバーにアプリケーションをインストールし、データベースを構築する
データ移行:実際のデータを移行する。データ量が大きいと時間がかかるので、AWS DataSyncなどデータ転送を行うサービスを併用する
このステップでは、概念的には上記にあたる内容を行いますが、実際にはAWSの提供しているサービスを組み合わせて実行していくことが多くなります。 - 運用段階
移行後の評価:運用後、不具合や想定外の動作などがないか検証する
AWSの運用:モニタリングやコスト管理、不要なリソースの削減などの運用管理を行う
AWSへスムーズに移行しにくいもの
オンプレミス環境で次のような運用をしている場合は、AWSに移行する前に再設計や修正が必要です。
- 古いバージョンのOSやミドルウェアを使っている
AWSでは、常に最新のOSやミドルウェアのライセンスが用意されています。しかし、オンプレミス環境では古いOSやミドルウェアを使っていることも多いでしょう。古いOSやミドルウェア上で動いていたアプリケーションは、まず新しいOSやミドルウェア上でうまく動くか確認し、必要に応じて修正しなくてはなりません。 - IPアドレスやIDがアプリケーションにハードコーディングされている
オンプレミス環境からAWSに移行すると、IPアドレスが変わります。Amazon Elastic IPアドレスを利用しないと、IPアドレスを固定することができません。また、AWSに移行するとサーバーなどのハードウェアはAWSのものを利用することになります。
アプリケーションにこれまでのIPアドレスやハードウェアIDをハードコーディングしている場合、アプリケーションが正常に動かなくなってしまうので、修正が必要です。 - クラスタや負荷分散の設定を行っている
オンプレミス環境でクラスタリング(クラスタ化)を行っていたり、特殊な負荷分散を設定していたりする場合、そのままの構成ではAWSに移行できないことがあります。構成を再検討し、負荷分散や高可用性は、Amazon ELBなど他の方法で実現するようにしましょう。
AWSへ移行するときに便利なAWSサービス
AWSへの移行には、次のようなサービスを併用すると便利です。これらのサービスは、すべてAWSが提供しています。
- CloudEndure Migration
移行元のサーバーにインストールしてクラウドへの移行を自動化します。移行元が物理サーバーでも仮想サーバーでも使えるので、クラウドサービス間の移行にも利用可能です。 - AWS Server Migration Service(SMS)
オンプレミス環境のワークロードをAWSに移行します。既存の環境への負荷が少なく、スケジュール設定で大規模な移行でもスムーズに処理可能です。 - AWS Transfer Family
Amazon S3へのファイル転送を行います。SFTP、FTPS、FTPなどの通信プロトコルを利用可能です。 - AWS DataSync
オンプレミス環境にインストールし、オンプレミス環境のストレージとAWSのストレージとの間でデータ転送を行います。
ほかにも、次のようなサービスが併用されることがあります。こちらもすべてAWSのサービスです。
- Migration Evaluator:移行評価サービス
- Cloud Adoption Readiness Tool (CART) :クラウド導入準備ツール
- AWS Migration Hub:AWS への移行を支援、追跡
- VM Import/Export:仮想化環境から仮想マシンをAmazon EC2にインポート
- AWS Storage Gateway:ハイブリッドクラウドストレージサービス
- AWS Direct Connect:オンプレミスとAWSとの間にプライベート接続を確立
- AWS Snowball:ペタバイト規模のデータ転送サービス
- AWS Database Migration Service:データベースをAWS に移行
また、AWSへの移行においては、システムズの次のサービスもぜひご活用ください。
移行をスムーズに進めるには段階的に行うのがポイント
オンプレミス環境にある既存のシステムをAWSなどのクラウドサービスに移行するには、多くの準備が必要です。また、AWSでのシステム構築や運用には、オンプレミス環境とは異なる部分もたくさんあります。一度にすべてのシステムをAWSに移行するのは難しいでしょう。
AWSへの移行をスムーズに進めるには、クラウド上での運用に向いたもの、オンプレミスでは運用が大変なものなどから段階的に移行していくのがおすすめです。
AWSへの移行を検討しているなら、まずは基本となるAmazon EC2 のことをよく理解しておきましょう。Amazon EC2については、「Amazon EC2の導入で社内のシステムを効率化できる?まずはEC2の基本を知ろう」もご参照ください。
参考: