「ChatOps」の活用 業務効率化と生産性向上
ツールやシステムを活用した業務効率化や生産性向上をいかに効率的に進めるかは、IT部門にとって大きな課題のひとつです。社内のさまざまな業務を効率的に行う施策であるChatOpsについて概要、メリット、活用方法についてお伝えします。
業務効率化を進めていくうえで、自社独自開発のアプリケーションを新規で構築する、という時代ではなくなっています。サブスクリプションなどで数多く提供されているツールやシステムの有効的な活用は欠かせません。
しかし、多くあるツールやシステムのなかから、自社のビジネスに適したものを選択し、社内に適用して利用浸透させていくかは、IT部門にとって大きな課題のひとつです。限られた予算と期間のなかで最大の効果を発揮させるため、常に試行錯誤を重ねているのではないでしょうか。
特に部署をまたいだ業務や連携を必要とする業務などは、IT部門の全社ガバナンスが効かない、あるいは予算的な都合もあり、それぞれが別々のツール、システムを使っているケースも多く見受けられます。結果的にそれらを連携できず、かえって業務が非効率になる場合も少なくありません。
そこで、今回は業務効率化、生産性向上を効率的に行うための施策、ソリューションのひとつであるChatOpsについて、その概要、メリット、効果的な活用方法についてお伝えします。
ChatOpsとは?
ChatOpsとは、「Chat」と「Operation system」を合わせた造語で、チャットを利用してシステム開発・運用から一般業務、IT業務までさまざまな業務の効率化を行えるものです。ChatOpsという名前そのもののツールがあるわけではなく、あくまでもチャットをベースにして業務を行う「手法」がChatOpsと呼ばれています。
特にエンジニアが多く在籍する開発・運用部門においては、情報共有が効率的に行われないと業務の滞りや行き違いが起こりやすくなります。
また、同時に開発・運用業務で使用する様々なツール同士の連携が取れていないとスムーズなプロジェクト推進は難しくなるでしょう。ChatOpsの活用はプロジェクトにかかわるメンバー間のリアルタイムでの情報共有やデータの共有を実現します。開発で使用するツールの連携、ビルドやデプロイ、テストなどのタスク実行、さらには開発したシステムの運用や保守、改善時の効率化も期待できます。
業務でChatOpsを使用することのメリット
業務でChatOpsを使用することでどういったメリットが生まれるのでしょう。ここでは、ChatOpsを使用する主なメリットをご紹介します。
- メンバー全員がリアルタイムで情報共有できる
チャットはそこに参加しているメンバー全員がリアルタイムかつ迅速に情報を共有できます。メールでもリアルタイムでの情報共有は可能ですが、ポイントは「スピード」です。
メールはメールアドレス、件名を入れ、さらに本文にも前文を入れるなど、送信するまでにやることが少なくありません。これに対しチャットは伝えたい内容だけを入力してすぐに送信できるため、手間をかけずスピード感のある情報共有が実現できます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、テレワークの導入を進める企業が増加。この流れは感染症が終息したとしても、働き方のひとつとして定着していくと予測できます。そのなかで、メンバー間での情報共有はオフィスに全員が揃っているときよりも難しくなるでしょう。そうした際にも、ビジネスチャットをも巻き込んだChatOpsを活用すればコミュニケーションが取りやすくなり、オフィスにいる時と変わらないリアルタイムでの情報共有が可能です。
- SaaSとの連携が可能になる
クラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるSaaS。ChatOpsは、このSaaSとの連携が可能になるのも大きなメリットです。たとえば、チャットツールのSlackは、ファイル管理、画面共有、顧客管理、タスク・プロジェクト管理、SNS、アンケート、ソフトウェア開発管理など多様なツールとの連携が行えます。
さらに、ChatOpsを利用することで複数のツールとチャットツールを通してやり取りができるため、ツールごとの往来を減らし業務効率化につながります。
これにより、情報共有をしながら、多くの業務を1つのツールだけで完結させることが可能になるのです。
- プロジェクト業務の効率化に貢献できる
リアルタイムでの情報共有やSaaSなどの各種サービスとの連携は業務効率化に大きく貢献します。ここで、さらに効率化を進めるのがチャットボットの活用です。
ビルドやデプロイ、テストなど、チャットボットにコマンドを送って実行することでエンジニアは開発に集中できるようになります。ほかにも、タスクをチャットツール上で実行することで、その結果を参加メンバー全員が共有でき、履歴も残せるといったメリットもあります。
- プロジェクト稼働後の保守運用、改善の効率が向上する
ChatOpsの活用はプロジェクト開発時だけではありません。開発したシステムの保守業務や、コーポレート部門の日々の業務面でもさまざまな場面で効果を発揮します。
たとえば、システム運用でトラブルが起きた際、担当者間だけで解決させてしまうと、次にまた同じトラブルが発生しても、その担当者がいなければ解決に時間がかかります。
しかし、ChatOpsで保守の状況、トラブル発生時の対応などを常にやり取りしていれば、参加メンバーの誰もがリアルタイムで状況を把握でき、トラブルが起きても同様の事象がないかどうか過去履歴を参照し、迅速な対応が可能です。開発を終えても継続的に業務効率化が図れ、生産性向上につながるのがChatOpsのメリットだといえるでしょう。
保守業務でも使用できるChatOpsとして、AWSが2020年4月にChatOpsを実現させるためのサービス、AWS Chatbotの提供を開始しています。チャットサービスのSlackと連携させることで、障害が発生した際には先述したような効果が期待できたり、Slackにメッセージを送ることでAWS環境を操作したりすることが可能になりました。
このように業務効率化につながるChatOpsですが、近年多くの企業で普及しつつあるRPAとチャットボットを組み合わせれば、単なるツールの連携以上の効果を発揮するでしょう。例えばチャット上で「スケジュール」と入力すると、タスク管理ツールにまとめられているスケジュールが表示されるといったことも可能になります。
※RPAに関しては「RPAツールが実現するシステム運用の業務効率化とそのポイント」もご参照ください。
チャットツールとボットツールの使用事例
ChatOpsはチャットボットと併用することで大きな効果を発揮します。ここではその具体的な使用事例を見ていきましょう。
チャットツールとボットツールの併用でもっとも多いのは、SlackとHubotを使ったものです。Hubotとは、チャットボット作成のフレームワークで、ゼロからボットを作成するのに比べ、容易にさまざまなチャットツール向けボットを作成できます。先述したようなビルドやデプロイ、テストなどのタスクを自動化するほか、次のようなことも可能です。
- テストを実行する日時を決められた時刻に発言させ、テストの実行忘れを防ぐ
- システムの運用状況レポートを毎日決まった時間にSlackに投稿させ、状況を共有する
- 会議室やミーティングルームの空き情報を確認し、重複している場合、その日時を投稿し、調整できるようにする
Slack、Hubot以外にChatOpsで活用できるチャット・ボットツール
- ChatWork
Slackほど拡張性は高くありませんが、チャットツールとしての基本機能が揃っているうえ、エンジニアではなくても使いやすいUIで誰もが気軽に情報共有できます。Slackの一人勝ちな状況ではありますが、ChatWorkを導入されている企業も多いでしょう。
- Workplace
Facebookが提供するビジネス用途に特化したSNSです。その機能のひとつとしてチャットサービス、Workchatがあります。インターフェイスがFacebookメッセンジャーとほぼ同じため、Facebookユーザーであれば使い方に迷うこともなくすぐに使いこなせるようになるでしょう。
- Ruboty
Ruby製のチャットボットフレームワーク。ボットの作成にRubyを使用するため、Rubyを扱っているプログラマーであれば、Hubotよりも効率的な作業が可能です。ただし、連携できるツールはHubotほど多くありません。
効率的な業務を実現するにはChatOps導入の検討を
業務は規模の大小にかかわらず、社員同士の連携はもちろん、使用するツールの連携も欠かせません。しかし、終息が見えない新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い今後もテレワークが働き方の一つとして定着すれば、今後、よりメンバー間でのスムーズな連携が生産性向上策として求められます。
また、合わせてデジタルトランスフォーメーションの実現に向け、経営のデジタル化に足かせとなる従来のITシステムを疎結合で効率的につなぐ(連携する)ことも重要です。そこでおすすめしたいのがChatOpsの活用です。
普段から使い慣れているチャットツールを開発業務に上手く活用すれば、情報共有はもちろん、SaaSの連携やbotを使ったテストも可能で、業務効率化に大きく貢献します。また、ChatOpsは開発業務だけではなく、その後のシステム保守、カスタマイズ、改善、運用はもちろん、IT系業務以外においても、一般的な事務作業などにも同様の効果を発揮させ、生産性向上を実現します。
業務効率化にお悩みの際は、Chatbotの活用も検討されてみてはいかがでしょうか。システムズではマイグレーションをはじめとしたITリノベーションサービスの一環として従来のITシステム間や各種のSaaSとの連携が可能なChatOps手法を用いたソリューションのご提案も可能です。ぜひ一度お問合せください。
参考になるサイト: