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2025年の崖とは?多くの企業が抱える課題を解決するためのDX実現に向けた取り組みのポイント

2022/06/06(初回公開日:2021/02/05)

経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートを公開し、DX元年といわれた2018年から早くも2年以上が経過しています。しかし、このレポートの中で経済産業省が指摘した「2025年の崖」問題の解消には、未だに多くの企業が頭を悩ませている状況です。そこで今回は、改めて2025年の崖とはどういったものなのか、問題解消に向かえないボトルネックはどこにあるのかを見つつ、2025年の崖を越えるためにやるべき対策についてお伝えします。

経済産業省が指摘する「2025年の崖」とは?

「2025年の崖」とは、多くの企業で複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが放置されたままの状況でいた場合に、国際競争から取り残され、経済が停滞してしまうリスクがあることを指したものです。経済産業省のレポートでは、現在の状況が克服できなければ2025年以降、最大で12兆円(年間)の経済損失を生じる可能性があるとしています。

「2025年の崖」を克服し、今後も持続的な成長を実現するための手段として、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出は喫緊の課題です。そのためにDXが欠かせないことは明白であるものの、それを阻む具体的な障壁は次のとおりです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を阻む障壁

  • 既存システムの複雑化・ブラックボックス化

DXを進めていくには、データのリアルタイム活用、環境の変化に迅速に対応、データを部門や部署を超えて全体で最適に活用できるITシステムの構築が必須です。しかし、多くの日本企業では、部門ごとに個別に最適されたシステムが構築されているうえ、過剰なカスタマイズが行われるケースが少なくありません。そのため、担当者以外は手をつけられないほどの複雑化、ブラックボックス化する傾向があります。

  • 経営者の無理解・現場サイドの抵抗

経済産業省のレポートでは、既存のシステム問題を解決しDXを進めていくには業務自体の見直しも必要となるため、現場サイドの抵抗も大きいとしています。もちろん、そうしたケースもありますが、実際には経営層のDXに対する無理解も少なくありません。

基本的にDXは全社で取り組む必要があり、そのためには経営層も現場もともにDXに対する理解を深め、導入を進めるためには何をするべきかを考えることが必須です。しかし、実際には双方でDXに対する理解が進んでおらず、足踏み状態が続いているというのが多くの企業の現状となっています。

DXが思うように進まない理由

DXがなかなか進まない状況が続いていますが、それには次のような理由が考えられます。

  • IT人材の不足

前出のレポートでは、2015年の時点ですでにIT人材が約17万人不足しているとしています。そして、2025年にはその人数が約43万人と約2.5倍まで増加。また、2019年4月に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、DXには欠かせない先端IT人材も2025年には少なくとも2.7万人、最大で8.8万人が不足すると予測しています。

さらに、この時期になると古いプログラミング言語を知る人材の定年退職が進むなど、IT人材の不足が業種を問わず顕在化します。

  • 既存システムの老朽化

IT人材不足が進むと問題となるのが、老朽化したシステムの維持管理です。これから2025年までの間に、多くの企業が現在活用しているさまざまなシステムのサポートが終了していきます。これにより、システムを維持・管理するコストの高額化はさけられないでしょう。そのうえ、保守運用の担い手不在により、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクも高まります。

「2025年の崖」の解消を阻むボトルネック

業種にかかわらずDXを進めていかなければ大きな損失を招くとされる2025年の崖。しかし、解決しようにもそれを阻むボトルネックがいくつか考えられます。

  • 経営層が既存システムの問題点を把握しきれていない

DXをスピーディーに進めていくには、自社の既存システムに生じている問題点の把握が欠かせません。しかし、経営層がそれを把握できていないため、DXの導入をしようにも何から始めてよいかわからず、足踏み状態が続いています。

  • 既存システムの刷新に大きなコストがかかる

既存システムの問題点を把握していたとしても、まだボトルネックがなくなったわけではありません。DXを進めていくには、多くの場合において既存システムの大幅な刷新が必須です。新たなシステムの導入はもちろん、既存システムからのデータ抽出にも大きなコストが発生します。

そもそも日本の企業にはITエンジニアが少なく、ほとんどはSlerやベンダー企業に属しているという構造的な問題があります。これにより、既存システムの刷新や新たなシステム導入を社外に依頼しなければならず、コストが増大する、もしくはコスト増を嫌い、足踏みを続けているうちに既存システムのブラックボックス化が進んでしまうのです。

「2025年の崖」のボトルネックを解消するための対応策

2025年の崖を回避するためのボトルネックを解消することへの、打つ手がないのかといえばそうではありません。ここではその対応策として5つのポイントを説明します。

 1.自社の課題を洗い出す

まず、やるべきは自社の課題の洗い出しです。それぞれの部署で業務フローをつくり、俯瞰で確認して課題点を可視化させます。この段階における重要な点は経営層がその課題をしっかりと把握することです。

 2.DXを推進するためのチームづくり

自社の課題を明らかにしたら次はその課題解決手段として、DXの導入を進めていくためのチームづくりを行います。経営者がリーダーを指名し、リーダーが各部署からメンバーを集めていくとよいでしょう。

 3.システム刷新の方法を検討する

すべてを新しいシステムにするのではなく、既存システムでも生かせるものは生かす。刷新が必要なものでもマイグレーションにより、既存データは最大限に生かしつつ、コストを抑える方法を検討していきます。

 4.取引先やベンダー企業との新たな関係構築を模索する

DXは自社内だけではなく、自社に足りない部分があれば積極的に他社との協業で補いつつ進めていきます。もし、課題点の解消が自社内では困難だと判断したら、取引先やベンダー企業との協業を模索しつつ、契約の見直しも進めていくとよいでしょう。

 5.DXに適した人材の雇用・育成

他社との協業を模索しつつ、同時に社内でDXに適した人材の雇用・育成も行います。既存社員から育成もしくは新たな雇用により、DXに適した人材を社内に増やしていくことが、将来的に協業を進める際にも大きな力となります。

「2025年の崖」を越え、DXを実現させるためのシナリオ

前項で2025年の崖を回避するためのボトルネック解消対策を説明しましたが、もう1つ重要なポイントとなるのがDXを実現させるためのシナリオ策定です。ここでは一般的なDX導入のシナリオ策定の3つのポイントを説明します。

 1.「DX-ready」の体制作り

自社の課題を明確にしたうえで、DX導入を進める環境「DX-ready」をつくり、システムの刷新が必要な部分から刷新を始めていきます。既存システムを生かせる部分は生かし、デジタル技術と組み合わせてDXを先行実施します。

 2.老朽化したシステムの廃棄

データの抽出が難しく改修コストもかかるような老朽化したシステムは廃棄により、ブラックボックス化を回避。その後、浮いた維持管理コストで新たなデジタル技術の活用にシフトします。

 3.DX推進のための働き方改革を実施する

デジタル技術の活用で業務効率化を図り、新たなビジネスモデル、サービスの創出を行います。そして、そのための働き方改革を進めていきます。

「2025年の崖」克服のポイントは経営層と一体となって理解を深めること

2025年の崖は、特定の企業ではなく、多くの企業にとって大きな課題です。残された少ない時間のなかで、克服しなければ、企業として生き残り、継続的に成長していくのは困難になるでしょう。

2025年の崖を越えるには、経営層と現場が一体となって課題に向き合っていく必要があります。自社の課題点の把握、新しいデジタル技術の導入、ベンダー企業との新たな関係構築、そして社内のDX人材育成まで、経営層と一体となって理解を深めることが、2025年の崖を克服し、DXの導入成功させるポイントと言えるでしょう。

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