【コラム】なぜ企業のDXが進まないのか。ビジネス視点とIT視点、足かせはなにか?「知の継承」

【コラム】なぜ企業のDXが進まないのか。ビジネス視点とIT視点、足かせはなにか?「知の継承」

はじめに

2018年9月に経済産業省からDXレポートが、次いで2020年12月には中間報告書であるDXレポート2が公開されました。DXは多くの企業の間でホットワードとなっているにもかかわらず、本格的推進への取り組みに至っていない企業が多いのはなぜなのでしょうか。

今回のコラムでは、まず、ビジネス・経営の視点から、DX推進上の課題を探るとともに、システム面からもDXを考察し、既存システムの「技術的負債」をいかに解消して「ITの仕組み変革」を実現していくかを考えてみたいと思います。

デジタル化に遅れを取る企業は世界から取り残される

DX(Digital Transformation)とは、企業が顧客・市場の破壊的な変化に対応しつつ、組織、文化、従業員の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの画面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創造し、競争上の優位性を確立すること。一口に言えば、デジタル技術を取り入れた新しいビジネスモデルを創出していこうというものです。

ところが、現実には、多くの企業でIT投資は既存システムの改修が中心となってしまっています。一般社団法人 日本情報システムユーザー協会が実施したデジタル化の進展に対する意識調査では、約7割の企業が「レガシーシステムがDXの足かせだと感じている」と回答しています。DXレポートでは、2025年には21年以上稼働している基幹系システムが6割を占めると予測、また、システムの維持管理費が年々高額化し、IT予算の9割以上を占めるようにもなるとも指摘し、「2025年の崖」と称して警鐘を鳴らしています。

経営者への提言

経営者への提言は、「価値創造の源泉の変化に気づく」→「現状に危機感を持つ」→「行動に移す」→「対話の重要性を認識する」→「社外とも積極的に連携する」というポイントでまとめられています。

「価値創造の源泉の変化に気づく」という点について、簡単に補足しておきます。センサーやIoTによってあらゆる事象がデータ化され、膨大なデータから新たな価値を創出することが、これからの社会では必須となってきています。膨大なデータを分析することで、スピーディな意思決定や最適な解決策を導き、見える化による業務の効率化、自動化による生産性向上、予測を用いた最適化などに適用できます。ゴールとなる活用イメージを明確にして、それに必要なデータ収集を行うことがポイントとなります。

次に「行動に移す」という点ですが、ゴールを決めロードマップを描くことがポイントです。まず経営者がビジョンを示し、ビジネス戦略やIT施策をロードマップに移していくことが大切です。しかし、既存のシステムがブラックボックス化している現状で、果たして具体的なロードマップが作成できるのか、絵に描いた餅になるのではないかという疑念も生じます。

DXレポート2では、レガシーシステムへの対応を「技術的負債の解消による投資確保」という観点で取り上げています。まずは、現状の業務やIT資産を整理し、課題の抽出と可視化を行った上で、経営者が将来ビジョンを明確にして、次期IT計画となるロードマップを作成することが必要です。続いて、そのロードマップに従って、段階的に既存システムを刷新(または廃棄)し、必要な機能は新たに構築したり、外部サービスを活用したり、既存システムと連携したりしながら、DXの準備を行い、実践フェーズへと進めていくことが求められます。

まずは業務やITの現状可視化から

先に述べた「技術的負債の解消」の第一歩として、既存システムをスリム化していくことが有効であるとDXレポートにも記載されています。これにより、システムの運用保守コストも段階的に削減させていくことになります。これを実現するためには、現状がどうなっているのかを知り、整理するということが非常に重要になります。

当社では、まさにこの部分を支援させていただく「IT総合診断」というサービスを提供しています。IT総合診断は、「業務プロセスの分析」と「IT資産の分析」の2つに大別されます。前者は、お客様の既存業務の全体像や各種業務の課題と今後の方向性などを整理するものです。後者では、既存システムの全体像やシステム課題、集約・撤廃できる資産の機械的な抽出などを行います。

具体的な取り組み事例を簡単にご紹介します。ある製造業のお客様では、基幹システムのBPRを希望され、老朽化対策として短期間・最小コストでのマイグレーションを実施することになりました。業務プロセス分析では、取引先との連携が自動化されていない点などを、IT資産分析では、使われていないVB6プログラムソースをそれぞれ整理しました。お客様の各部署の協力をいただき、利用頻度の低いプログラムや機能の廃棄を行っています。未稼働資産の削除は、作業の効率化はもとより、システムを刷新する場合にもコストダウンに繋がります。

また、ある家電製品の販売代理店では、各部門が独自のシステムを導入しており、連携は人の手で行っていました。パッケージも導入されていましたが、コストをかけていたわりには使っていない機能も多いのが実情でした。このお客様にも資産の可視化・分析を行い、必要な機能だけに絞って整理、人の手で対応していた部分もできるだけ自動化しています。また、老舗の印刷物加工会社では、システムが老朽化・ブラックボックス化し、必要な改修に膨大な工数がかかっていたり、既存機能をコピーして修正していたため同じような機能が多く存在するといった課題がありました。IT資産分析により、全体のスリム化と類似プログラムの整理を行っています。

老朽化したシステムが要因でDXが思うように進められない企業は、まず現状の可視化・分析を行うことで、技術的負債からの脱却を図ることをお勧めします。